2023/03/20

「大手電力会社による新電力の顧客情報の情報漏洩及び不正閲覧に関する提言」(再エネTF)

再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(再エネTF)第25回会議が、2023年3月2日に行われました。

議題は「大手電力会社による新電力の顧客情報の情報漏洩及び不正閲覧について」です。一般送配電事業者が保有する新電力の顧客情報が、同じ大手電力会社の小売部門によって不正に閲覧される事案が相次いでいることを受け、この問題に対する構成員提言を提出しています。

本提言のポイント

以下は、先に挙げた構成員提言からの抜粋です。

「・本件は、電力自由化の根底を揺るがす不祥事である。電気事業法で規定されている範囲で可能な最も厳正な処分が、経産大臣には求められる。

・一般送配電事業には経産大臣の許可が必要である。今回の情報漏洩は電気事業法に違反する基本的な禁止行為であ(る)。

 ⇒提言: ・事案の悪質性に応じ、情報漏洩を行なった一送の許可を取り消す。許可の取り消しと同時に、法定独占である一般送配電事業を継続するため、事業の承継先に即日許可を出す。これによって、安定供給上支障のない秩序立った移行を行う。」(P. 5)

「承継先としては、旧一電の会社分割によって誕生する新会社、あるいは送電部門を譲渡する先の他社とする。結果的に、送電事業の許可取り消しを命ぜられた旧一電では、所有権分離が実現する。これは、現在の電気事業法は、所有権分離を義務づけてはいないが、選択肢としては与えていることを意味する。」(P. 5, 注15)

会議での発言録

当日の再エネTF会議では、主に以下のように発言しました。(議事録はこちらから)

八田です。この提言のことについてなのですが、2月21日の電取委の審議会の資料では、電気事業法の関係規定の中に事業許可や登録の取り消しというオプションが全く掲載されていないのです。これは昨日開かれたエネ庁の基本問題小委でも同様なのです。

先ほど高橋委員がおっしゃったように万を超えるというようなケースがあります。これらは、1桁の閲覧数といったケースと違って、過失であった可能性は、かなり低いと思います。故意に行われていたとすると、法的分離の前提を全くないがしろにしたわけですから、前代未聞の行為規制違反が行われたわけです。それに対して許可や登録の取消を検討のオプションに入れないことの理由が全く分からない。意図的に軽い処分に誘導していると見られても仕方ないのではないかと思います。

この点について当局の御意見を伺いたいと思います。(第25回議事概要, pp. 7-8)


それ(※行政処分には比例原則に基づく対応が必要という旨)はおっしゃるとおりだと思います。私も全部を今、許可取り消しをすべきだと申し上げているわけではありません。しかし、これは法律違反なのですから許可の取り消しの検討はすべきではないか。それを検討の俎上に載せていなかったということの説明になっていない。

ただし、検討の俎上にも載せないということは、それは各電力会社がこれほどの大規模な違反をしたことの原因を説明してくれると思います。要するにこういうことをやっても、許可の取り消しを検討しようともしないという役所なのだということも分かっているからやり放題やる。そう考えられます。だから、これは役所のほうにも大きな問題がありえます。

許可の取り消しは結局発送電の資本分離につながり得る重大な行政処分ですから、このオプションを論議の課題に載せていただきたいと思います。

なお、欧州では欧州委員会が全加盟国に対して、資本分離しろと言ったのにフランスとドイツは、法的分離にとどめたいが、その代わりに非常に強い行為規制を置くことだったので、欧州委員会は渋々認めたという背景があります。日本は、その先例をいわば踏襲したわけです。

このような背景がありますので、欧州では、情報漏えいに関して、どれくらいの規模の行為規制違反がこれまであったのかを知りたいと思います。もし、欧州ではなくて、日本でだけこれだけの規模であったとしたら、日本では法的分離が機能していない原因を究明し、たとえば、罰則の違いによるものか、当局の姿勢の違いによるものかを明らかにすることが、再発を防ぐために必要があると思います。(第25回議事概要, pp. 8-9)


あえて言えば、これほどの事案が起きたときには、法的分離をしているほかの国では、どういう対応しているのかということを当局は即座に調べられるべきではないかなと思います。 (第25回議事概要, p. 9)

※ 議事概要の公開に伴い、発言の出所となるページ番号を追記しました。(2023年5月18日)

2023/03/18

日経新聞「中国電力の不正閲覧、件数急増が映す「甘さ」」にコメントが載っています

電力会社が送配電子会社の管理する顧客情報を不正に閲覧していた問題について、日経新聞の記事「中国電力の不正閲覧、件数急増が映す「甘さ」」(2023年2月21日)に、コメントが掲載されています。

中国電は営業活動には利用していないとするが、監視委の前委員長の八田達夫・アジア成長研究所理事長は「営業に利用したかにかかわらず一連の情報漏洩は深刻で、それ自体が発送電分離による競争促進の大原則を否定したことになる」と指摘する。

中国電はシステム設計の不備やコンプライアンス(法令順守)意識の欠如を認めており、社内では順次、研修を実施しているという。社内処分については「再発防止に取り組んでいる段階」として明らかにしていない。八田氏は「中国電には今後、送配電部門との人事交流の禁止や内部通報を強化するなどの再発防止策が求められる」としている。