朝日新聞にインタビューが2つ掲載されています。1回目は長期的なエネルギー転換をもたらすための負の価格制度について、2回目は大手電力による情報漏洩の再発防止策についてです。
- 再エネ電気を賢く使うには、「マイナス価格」有効 元電取委委員長(2024年3月31日)
- 不祥事相次ぐ大手電力、元電取委委員長 「不正に罰則必要」(2024年4月8日)
朝日新聞にインタビューが2つ掲載されています。1回目は長期的なエネルギー転換をもたらすための負の価格制度について、2回目は大手電力による情報漏洩の再発防止策についてです。
「第28回 再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」(2023年11月10日)において、蓄電池の大量導入に向けた系統連系に係る認証手続等の在り方について、構成員として提言しました。
日経新聞「経済教室」欄(2023年10月13日朝刊)に、「FITからFIPへの転換を促す制度改革」についての論考が掲載されました。
「第27回 再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」(2023年6月29日)において、電力市場に負の価格を導入することを構成員として提言しました。
次のディスカッションペーパーが、京都大学再生可能エネルギー経済学講座のウェブサイトに掲載されています。コメント、ご批判等をいただければ幸いです。
再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(再エネTF)の第25回会議が、2023年3月2日に行われました。
議題は「大手電力会社による新電力の顧客情報の情報漏洩及び不正閲覧について」です。一般送配電事業者が保有する新電力の顧客情報が、同じ大手電力会社の小売部門によって不正に閲覧される事案が相次いでいることを受け、この問題に対する構成員提言を提出しています。
以下は、先に挙げた構成員提言からの抜粋です。
「・本件は、電力自由化の根底を揺るがす不祥事である。電気事業法で規定されている範囲で可能な最も厳正な処分が、経産大臣には求められる。
・一般送配電事業には経産大臣の許可が必要である。今回の情報漏洩は電気事業法に違反する基本的な禁止行為であ(る)。
⇒提言: ・事案の悪質性に応じ、情報漏洩を行なった一送の許可を取り消す。許可の取り消しと同時に、法定独占である一般送配電事業を継続するため、事業の承継先に即日許可を出す。これによって、安定供給上支障のない秩序立った移行を行う。」(P. 5)
「承継先としては、旧一電の会社分割によって誕生する新会社、あるいは送電部門を譲渡する先の他社とする。結果的に、送電事業の許可取り消しを命ぜられた旧一電では、所有権分離が実現する。これは、現在の電気事業法は、所有権分離を義務づけてはいないが、選択肢としては与えていることを意味する。」(P. 5, 注15)
当日の再エネTF会議では、主に以下のように発言しました。(議事録はこちらから)
八田です。この提言のことについてなのですが、2月21日の電取委の審議会の資料では、電気事業法の関係規定の中に事業許可や登録の取り消しというオプションが全く掲載されていないのです。これは昨日開かれたエネ庁の基本問題小委でも同様なのです。
先ほど高橋委員がおっしゃったように万を超えるというようなケースがあります。これらは、1桁の閲覧数といったケースと違って、過失であった可能性は、かなり低いと思います。故意に行われていたとすると、法的分離の前提を全くないがしろにしたわけですから、前代未聞の行為規制違反が行われたわけです。それに対して許可や登録の取消を検討のオプションに入れないことの理由が全く分からない。意図的に軽い処分に誘導していると見られても仕方ないのではないかと思います。
この点について当局の御意見を伺いたいと思います。(第25回議事概要, pp. 7-8)
それ(※行政処分には比例原則に基づく対応が必要という旨)はおっしゃるとおりだと思います。私も全部を今、許可取り消しをすべきだと申し上げているわけではありません。しかし、これは法律違反なのですから許可の取り消しの検討はすべきではないか。それを検討の俎上に載せていなかったということの説明になっていない。
ただし、検討の俎上にも載せないということは、それは各電力会社がこれほどの大規模な違反をしたことの原因を説明してくれると思います。要するにこういうことをやっても、許可の取り消しを検討しようともしないという役所なのだということも分かっているからやり放題やる。そう考えられます。だから、これは役所のほうにも大きな問題がありえます。
許可の取り消しは結局発送電の資本分離につながり得る重大な行政処分ですから、このオプションを論議の課題に載せていただきたいと思います。
なお、欧州では欧州委員会が全加盟国に対して、資本分離しろと言ったのにフランスとドイツは、法的分離にとどめたいが、その代わりに非常に強い行為規制を置くことだったので、欧州委員会は渋々認めたという背景があります。日本は、その先例をいわば踏襲したわけです。
このような背景がありますので、欧州では、情報漏えいに関して、どれくらいの規模の行為規制違反がこれまであったのかを知りたいと思います。もし、欧州ではなくて、日本でだけこれだけの規模であったとしたら、日本では法的分離が機能していない原因を究明し、たとえば、罰則の違いによるものか、当局の姿勢の違いによるものかを明らかにすることが、再発を防ぐために必要があると思います。(第25回議事概要, pp. 8-9)
あえて言えば、これほどの事案が起きたときには、法的分離をしているほかの国では、どういう対応しているのかということを当局は即座に調べられるべきではないかなと思います。 (第25回議事概要, p. 9)
※ 議事概要の公開に伴い、発言の出所となるページ番号を追記しました。(2023年5月18日)
電力会社が送配電子会社の管理する顧客情報を不正に閲覧していた問題について、日経新聞の記事「中国電力の不正閲覧、件数急増が映す「甘さ」」(2023年2月21日)に、コメントが掲載されています。
中国電は営業活動には利用していないとするが、監視委の前委員長の八田達夫・アジア成長研究所理事長は「営業に利用したかにかかわらず一連の情報漏洩は深刻で、それ自体が発送電分離による競争促進の大原則を否定したことになる」と指摘する。
中国電はシステム設計の不備やコンプライアンス(法令順守)意識の欠如を認めており、社内では順次、研修を実施しているという。社内処分については「再発防止に取り組んでいる段階」として明らかにしていない。八田氏は「中国電には今後、送配電部門との人事交流の禁止や内部通報を強化するなどの再発防止策が求められる」としている。
「大手電力による顧客情報の不正閲覧」に関する朝日新聞の記事に、コメントが掲載されています。
不正閲覧が問題となるのは、公平な競争ができなくなるおそれがあるからだ。
電力事業は大手10社が地域ごとに独占していたが、2016年の完全自由化によって、新電力が家庭向けも含めた電気の販売に参入した。大手電力の送配電部門は、販売や発電など他の部門から切り離すことが義務づけられ、沖縄電力以外は子会社としている。
送配電設備は新電力会社も使うため、顧客情報を送配電子会社に伝えている。この情報を親会社である大手電力会社が見て、ライバル会社の顧客に営業をかけないよう、法律で閲覧を禁じている。今回、大手6社はこれに違反して閲覧していた。さらに、関電は営業活動にも使っていた。
電力各社は「過失」を強調するが、規模を含め判明していない点も多い。前電力・ガス取引監視等委員長の八田達夫・アジア成長研究所理事長は、今回の不正閲覧について「日本では、大手電力と送配電部門を他の部門との間で『発送電分離』した。その前提である部門間の情報遮断ができなかった以上、今後は部門間の人事交流を禁じ、違反には送配電部門を売却せざるを得ない規模の罰金を科す必要がある」と指摘する。
記事全文は次のリンクからご覧ください。
日本維新の会 国会議員団 経済産業部会にて、「エネルギー政策における市場の活用について」の講演を行いました。
講演の模様と、その際に使用したスライドは、次のリンクからご覧ください。
Working Paper「内外無差別化の必要性」を、AGIのリポジトリに公開しました。
以下に要旨を引用します。
現在、旧一般電気事業者(旧一電)の発電部門は、社内小売部門とのみ、変動数量契約の一種を結んでいる。この契約には、契約で購入した電力の、取引所への再販禁止などの条件が付けられている。この契約を「UR契約」とよぶ。
本稿は、UR 契約が社内でのみ結ばれていることが、次の弊害を生んできたことを指摘する。第1に、複数価格の併存が、社会的に非効率的な資源配分をもたらす。第2に、市場価格高騰時に価格高騰を増幅させる。第3に、発電部門による取引所への販売量の変動が、先物市場の発達を阻害する。
日本の UR 契約には、高い水準の取引上限値が設定されている。そのため、気温の上昇のように旧一電小売部門の電力需要を増大させる要因が生じた際にも、小売部門の需要量が UR 契約の上限量を超えない需要量に留まり、小売部門は新電力に比べて安い契約価格で購入し続けることができる。これが上記の弊害の原因である。
発電部門が UR 契約を結ぶためには、小売側に対して、契約に基づいて購入した電力の取引所への再販売禁止などの契約条件を、遵守させる必要がある。ただし、発電部門にとって、新電力に対して、これらの義務付けの遵守を監視するためには、社内取引で行う場合と比べて大きな監視コストが追加的に掛かる。このため、発電部門は、新電力とは UR契約を結んでこなかった。
一方、契約における内外無差別、すなわち「すべての小売事業者が、旧一電の小売部門と同一の契約条件の契約を、旧一電の発電部門と結べること」が義務付けられた場合、旧一電の発電部門にも、新電力に対する監視コストに見合った禁止的に高い料金を取らざるを得なくなる。この結果、日本で現在行われているUR契約は、諸外国と同様に存在しなくなり、UR契約が生む上記弊害を取り除去される。