2017/08/07

獣医学部新設に関する衆院予算委員会での参考人としての発言です

7月24日の衆議院予算委員会における、参考人としての発言を以下に掲載します。

小野寺委員 (中略)最後に、八田委員にお伺いします。
 今回の一連の経緯を聞いて、今回の獣医学部新設に当たって政治の不当な介入があったり公正な行政がねじ曲げられた、そのようにお感じになられるでしょうか。 
八田参考人 公正な行政がねじ曲げられたかという御質問でございますが、不公平な行政が正されたと考えております。
 多くの特定業界が参入規制から得る権益は、政官業の癒着の財源であります。業界団体は関係議員に参入規制を陳情し、関係議員はその業界の監督官庁に圧力をかけて、規制を手に入れます。意欲的な新規業者が規制緩和を官庁に要望しても、普通は係長が対応して、門前払いをいたします。
 国家戦略特区は、こうした現状を打破する制度です。そのための最大の武器は、規制の根拠の説明責任を規制官庁に全面的に負わせることです。
 まず、事業者から規制緩和の申請があった際、監督官庁の課長に現在の規制が必要な理由を説明してもらいます。説明が合理的でないと判断された場合には、審議官、局長をお呼びし、担当者の格を上げていきます。それでも折り合いがつかない場合には、最終的には規制担当省庁の大臣が、月一回開かれる特区諮問会議で、総理の前で規制を弁護しなければならないという仕組みになっています。このため、規制官庁は不合理な説明では耐えられないわけです。
 獣医学部の新設制限は、参入制限、参入規制の典型であります。新設される学部の質は、文科省に設置された大学設置審で審査します。経済学部などは、設置審さえ通れば、需給状況を行政が事前に判断することなく新設できます。これによって、競争を通じた新陳代謝が起きます。しかし、文科省は、獣医学部に関しては、どのようにすぐれた新設計画であろうと、設置審の審査を受けることすら認めていません。これは利権と密接にかかわっています。
 獣医学部の新設制限は、日本全体の成長を阻害しています。鳥インフルエンザなどの感染症対策、製薬やバイオなどの重要な成長分野です。日本経済を再活性化させるには、こうした分野で世界的に勝負できる獣医学研究者の育成は欠かせません。五十年間新設がなかった獣医学部が新設されることで、ゆがんでいた規制を正すための第一歩が記されたと思っております。
 次に、ちょっと今出た議論に関して一言申し上げたいんですが、総理の意向を、内閣府の担当幹部からあったかどうかという議論がございました。
 国家戦略特区は、和泉参考人も藤原参考人も言われましたように、岩盤規制を打破するという総理の強いリーダーシップのもとに運営されています。岩盤規制の打破という意味で、総理の方針の言及があったとしても何らおかしいことではありません。むしろ、そうした発言を特定の事業者を優遇すべきだ、意向だと受けとめたとしたら、それは、自身が既得権を優遇してきた人でなければ思いつかない論理ではないかと思います。

2 件のコメント:

  1. 初めまして。早速ですが、八田先生の「獣医学部の新設制限は、日本全体の成長を阻害しています。鳥インフルエンザなどの感染症対策、製薬やバイオなどの重要な成長分野です。日本経済を再活性化させるには、こうした分野で世界的に勝負できる獣医学研究者の育成は欠かせません」というご発言に関連して質問させて頂きたく存じます。
    仮に、今般行政における解決すべき課題を①愛媛県・今治市における産業動物獣医師の不足解消と、②日本の獣医学の水準が世界から劣後している状況の解消の2点とした場合、例えば、①については産業動物獣医師の待遇改善という方策も考えられますし、②についてはむしろ獣医学部を16校を4校程度に絞ったうえで、集中的に資源を投下すべきという獣医学の専門家もおられます。
    僭越ながら、行政のあるべき姿とは、課題をきちんと特定し、その課題に対する方策を複数の選択肢から合理的に選択するというプロセスが必須だと思われます。また、当該プロセスにおいては、現場で奮闘する産業動物獣医師方や、獣医学の専門家方の意見を踏まえる必要もあると存じます。そうしたことを踏まえると、今回ご提示された「規制の緩和」や「獣医学部の新設」という方策は、課題解決に本当に効果があるのか、合理的な選択なのかという点でやはり疑義ありと言わざるを得ないのではないでしょうか。

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  2. 澤田さんのコメントにまったく同意です。実績のない大学に学部を新設するなど、合理的な解決ではありません。澤田さんご指摘の①については、八田先生ご自身、平成27年6月5日の特区でのヒヤリングの際、「この分野の人を愛媛県庁が雇うときに、給料を上げるなり、待遇を改善するなり、全国とこの大学に行こうと使える今治での獣医奨学金というものを作って、将来愛媛県庁に来たらちゃらにしてあげますという仕組みを作ったほうがよほど簡単な気がするのです」と、愛媛県の地域振興局長に指摘しておられます。
    国家資格に直結する、専門職を養成する学部なのですから、専門家の意見を仰ぐのは、必須の手続きだと思います。特区諮問会議での独断的な拙速の判断、まったく理解に苦しみます。

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