日本学士院ニュースレター(第35号(2025.04))に私の論考が掲載されました。
記事は以下よりご覧ください:
https://drive.google.com/file/d/1oqE4Y6d4SoqKCmf78prE_oCmQu0bxtdC/view?usp=sharing
日本学士院ニュースレター(第35号(2025.04))に私の論考が掲載されました。
記事は以下よりご覧ください:
https://drive.google.com/file/d/1oqE4Y6d4SoqKCmf78prE_oCmQu0bxtdC/view?usp=sharing
アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「財政補助なしの『年収 130 万円の壁』対策」を発行しました。(2025年3月)
全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2025/WP2025-03.html
【AGIリポジトリ】https://agi.repo.nii.ac.jp/records/2000185
要約:
給与所得者の妻の年収が 130 万円を超えると社会保険料を妻自身で納めなければならなくなるために、世帯の手取額が急減することは、「130 万円の壁」と呼 ばれている。本稿は、政府による財政支援なしにこの壁を取り除くことが可能であることを示す。具体的には、給与所得者の妻の年収が 130 万円を超えた場合、 夫の雇用先に「卒扶養手当」の支給を義務付けることによって、雇用先の利益も、この世帯の手取りも、共に増加させ続けられることを示す。さらに、そのた めに必要な、日本年金機構と夫の雇用先との間の財務調整を明らかにし、それを可能にするために政府が整備すべき制度および税制を提案する。
日本における貧困対策としての社会保障と税制
と題する論文を書きました。これは、
「可処分所得(すなわち手取り所得)で計測した”相対的貧困率”
https://drive.google.com/file/d/1jEQ0JGmzrMOS6agZ4bzZ3xsIEaMpmh2I/view?usp=sharing
アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「Causes of the Sharp Decline in Migration to Major Metropolitan Areas in the 1970s」を発行しました。(2024年11月(2024年12月に編集))
全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2024/WP2024-18.html
【AGIリポジトリ】https://agi.repo.nii.ac.jp/records/2000145
「Causes of the Sharp Decline in Migration to Major Metropolitan Areas in the 1970s」
要約:
Japan's rapid growth in the 1960s was accompanied by a massive migration from rural to urban areas. However, immediately after 1970, migration declined sharply, and at the same time, the rate of economic growth plummeted.
To explain this decline in urban-bound migration, we estimated the urban-bound migration function.
The estimation reveals that in the 1970s, the largest factor contributing to the decline in this migration was the relative increase in per capita income in rural areas. The second most important factor was narrowing regional disparities in the job-to-application ratio. In addition, the relative increase in the stock of social capital in the local regions also contributed. However, the population change in the rural areas had negligible effects on urban-bound migration in the 1970s.
This paper also demonstrates that the relative increase in per capita income in rural areas is largely due to policy-based regional redistribution, implying that the large-scale redistribution of the fruits of rapid economic growth to rural areas halted urban-bound migration and reduced the growth rate. This suggests that for developing countries experiencing high growth, curbing the political pressure to redistribute to rural areas may be important to sustain the growth.
アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「解雇手当契約を可能にする社会インフラ整備」を発行しました。(2024年3月)
全文は下記からご覧ください:
米国では人材の解雇と新規採用によって、技術革新に必要な、機敏な人材の配置換えが可能である。対して、日本では、解雇が困難であり、その分、特に、IT 産業などで、時代に合った採用が出来ず、長期的な生産性の伸びを抑制している。
本稿では、まず、従来からの慣行型の雇用契約を残しつつ、解雇条件を明文化した新規契約をも可能にする規制緩和を提案する。次に、そのために必要な解雇手当基金や雇用保険制度などの社会インフラの整備を提案する。特に、企業による解雇手当基金への積み立ての義務化、国によるデフォルトの解雇手当水準の設定、雇用保険料への履歴料率制の導入など、労働市場の健全な流動化を促進する仕組みについて論じる。解雇が起きにくいことを前提として構築されている現行の社会インフラのまま、解雇条件を明文化した契約を導入すると、企業による解雇の頻発や労働者による解雇手当獲得を目的とする退職などのモラルハザードを生むことになるからである。
本稿で提案する社会インフラ整備の下では、解雇条件を明文化した新規契約を結ぶ企業に対しては、解雇時にそれが社会に及ぼす負担に応じたペナルティを与える一方、解雇される労働者には解雇手当の給付を確実にする。解雇された労働者が受ける保護は格段に向上する。
一方、企業はそれらの代償を払った上で、自社に必要な能力を持たない労働者を解雇できるため、能力のある労働者のみを高い賃金を支払って雇用できるようになる。これは、新時代が必要とするイノベーションを、日本でも可能にする。
アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「内外無差別化の必要性」を発行しました。(2023年1月)
全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2023/WP2023-01.html
【AGIリポジトリ】https://agi.repo.nii.ac.jp/records/2000035
「内外無差別化の必要性」
要約:
現在、旧一般電気事業者(旧一電)の発電部門は、社内小売部門とのみ、変動数量
契約の一種を結んでいる。この契約には、契約で購入した電力の、取引所への再販禁
止などの条件が付けられている。この契約を「UR契約」とよぶ。
本稿は、UR 契約が社内でのみ結ばれていることが、次の弊害を生んできたことを指
摘する。第 1 に、複数価格の併存が、社会的に非効率的な資源配分をもたらす。第 2
に、市場価格高騰時に価格高騰を増幅させる。第 3 に、発電部門による取引所への販
売量の変動が、先物市場の発達を阻害する。
日本の UR 契約には、高い水準の取引上限値が設定されている。そのため、気温の
上昇のように旧一電小売部門の電力需要を増大させる要因が生じた際にも、小売部門
の需要量が UR 契約の上限量を超えない需要量に留まり、小売部門は新電力に比べて
安い契約価格で購入し続けることができる。これが上記の弊害の原因である。
発電部門が UR 契約を結ぶためには、小売側に対して、契約に基づいて購入した電
力の取引所への再販売禁止などの契約条件を、遵守させる必要がある。ただし、発電
部門にとって、新電力に対して、これらの義務付けの遵守を監視するためには、社内
取引で行う場合と比べて大きな監視コストが追加的に掛かる。このため、発電部門は、
新電力とは UR契約を結んでこなかった。
一方、契約における内外無差別、すなわち「すべての小売事業者が、旧一電の小売
部門と同一の契約条件の契約を、旧一電の発電部門と結べること」が義務付けられた
場合、旧一電の発電部門にも、新電力に対する監視コストに見合った禁止的に高い料
金を取らざるを得なくなる。この結果、日本で現在行われている UR 契約は、諸外国
と同様に存在しなくなり、UR契約が生む上記弊害を取り除去される。
アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「大都市への人口移動の決定要因としての地方人口と地域間所得格差」を発行しました。(2022年3月)
全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2022/WP2022-07.html
【AGIリポジトリ】https://agi.repo.nii.ac.jp/records/220
「大都市への人口移動の決定要因としての地方人口と地域間所得格差」
要約:1960年代の日本の高度成長は、地方圏から大都市圏への大規模な人口移動を伴っていた。ところが1970年前後に急速に人口移動が減少すると共に、経済成長率も激減した。
当時の地方圏から大都市圏への人口移動のうち、中学校・高校の新卒者の占める割合は3分の1未満であり、20代、30代の移動も多かった。このため、人口移動関数の推定を15歳以上の各年齢層別に行った。結果的に、39歳以下の年齢層人口で、最も高い決定係数が得られた。なお、この年齢層の地方圏人口は、70年代を通じてほぼ一定であるので。地方圏人口の減少が人口移動減少の原因ではない。
1970年代において、この年齢層に人口移動減少をもたらした最大の要因は、有効求人倍率の地域間格差が縮小したことであった。二番目に大きな要因は、地方圏の一人当たり所得の相対的な向上である。さらに、地方圏の社会資本ストックの相対的な増加も貢献している。
次に、中学校・高校の新卒者に限定してこの回帰分析を行うと、短期的要因である有効求人倍率の格差縮小は、有意ではなかった。新卒者にとっては、地方圏の一人当たり所得の相対的な改善と、社会資本ストックの相対的改善が、移動のより大きな決定要因となっている。
さらに、本稿では、地方における一人当たり所得の相対的向上は、政策的な再分配によるところが大きいことも実証する。
現在、高度成長を経験している途上国では、その結果として生じるであろう地方への再分配の政治的圧力を、いかに抑制するかが重要であることを、この結論は示唆している。
中国の学術誌《比较》(2024年第6期)に、日本の社会保障制度とその問題点(日本社会保障制度及其问题)をテーマに執筆した論文の中国語訳が掲載されています。
本論文の英語版を、以下のリンクからご覧いただけます。
次のディスカッションペーパーが、京都大学再生可能エネルギー経済学講座のウェブサイトに掲載されています。コメント、ご批判等をいただければ幸いです。
Working Paper「内外無差別化の必要性」を公開しました。
以下に要旨を引用します。
現在、旧一般電気事業者(旧一電)の発電部門は、社内小売部門とのみ、変動数量契約の一種を結んでいる。この契約には、契約で購入した電力の、取引所への再販禁止などの条件が付けられている。この契約を「UR契約」とよぶ。
本稿は、UR 契約が社内でのみ結ばれていることが、次の弊害を生んできたことを指摘する。第1に、複数価格の併存が、社会的に非効率的な資源配分をもたらす。第2に、市場価格高騰時に価格高騰を増幅させる。第3に、発電部門による取引所への販売量の変動が、先物市場の発達を阻害する。
日本の UR 契約には、高い水準の取引上限値が設定されている。そのため、気温の上昇のように旧一電小売部門の電力需要を増大させる要因が生じた際にも、小売部門の需要量が UR 契約の上限量を超えない需要量に留まり、小売部門は新電力に比べて安い契約価格で購入し続けることができる。これが上記の弊害の原因である。
発電部門が UR 契約を結ぶためには、小売側に対して、契約に基づいて購入した電力の取引所への再販売禁止などの契約条件を、遵守させる必要がある。ただし、発電部門にとって、新電力に対して、これらの義務付けの遵守を監視するためには、社内取引で行う場合と比べて大きな監視コストが追加的に掛かる。このため、発電部門は、新電力とは UR契約を結んでこなかった。
一方、契約における内外無差別、すなわち「すべての小売事業者が、旧一電の小売部門と同一の契約条件の契約を、旧一電の発電部門と結べること」が義務付けられた場合、旧一電の発電部門にも、新電力に対する監視コストに見合った禁止的に高い料金を取らざるを得なくなる。この結果、日本で現在行われているUR契約は、諸外国と同様に存在しなくなり、UR契約が生む上記弊害を取り除去される。
アジア成長研究所の雑誌『東アジアへの視点』に、保科寛樹氏との共著論文「人口成長率の低下は,生産性を上昇させる傾向がある」を執筆しました。
要旨
「人口成長率の低下は生産性(1人当たりGDP)の成長率を下げる」という因果関係は,広く信じられており,地方への人口分散政策や外国人単純労働者受け入れ政策の与件とされていることが多い。この命題は,労働力投入の増大による集積の経済がもたらす生産性増大効果が強く,その効果が,労働の限界生産力逓減の法則による生産性低減の効果を超えることを,暗黙の内に前提としている。本稿では,この因果関係が実証的に成り立っていないことを明らかにする。具体的には,OECD加盟国,およびOECDにASEAN加盟国・中国・インドを加えた各国の,1961~2019年間のデータを分析対象として,次を示す。(1)この全期間において,人口成長率と1人当たりGDP成長率との間に,統計的に有意な正の相関関係は成り立たない。この間を10年ごと・20年ごとなどに分割したどの期間についても,同様である。(2)本稿で分析した大多数のサンプルグループにおいて,統計的には有意でないものの逆の関係が回帰分析では観察される。(3)特定の期間と国グループの組み合わせでは,負の関係が統計的に有意に成り立つ。これらの事実は,一般に広く信じられているほどには集積の利益が強くないことを実証的に示している。「人口成長率の低下が生産性の成長率を下げる」という因果関係は,実証的に検証されていないという事実は,広く政策担当者に認識されるべきであろう。
八田達夫・保科寛樹(2020)「人口成長率の低下は,生産性を上昇させる傾向がある」,『東アジアへの視点』,第31巻2号,2020年12月,http://shiten.agi.or.jp/2020/12/1559/
日本経済新聞出版から、『コロナ危機の経済学』(編著:小林慶一郎、森川正之)が出版されました。
八田は「第3章 パンデミックにも対応できるセーフティネットの構築」を執筆しました。新型コロナウイルスのパンデミックが露わにした、現行のセーフティネット制度の弱点を解消し、「給付を迅速に支給できるセーフティネット」を構築する方策について、検討・提言しています。