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2025/06/12

AGIワーキングペーパー・シリーズ「日本の貧困率と社会保障財源」

アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「日本の貧困率と社会保障財源」を発行しました。(2025年6月発行

全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2025/WP2025-11.html
【AGIリポジトリ
https://agi.repo.nii.ac.jp/records/2000212

要約:

現在日本では、失業率が低下しているにもかかわらず、消費が伸びていない。その一つの理由は、低所得者の可処分所得(すなわち手取り所得)が伸びていないことにある。低所得者の消費性向は高いから、その可処分所得を引き上げる政策は、消費を増やし、経済を活性化させ、結果的に、低所得者以外の可処分所得も引き上げる。貧困率の引き下げは、経済活性化の観点から最重要課題である。
実は日本では、貧困率の引き下げの余地は大きい。可処分所得で計測した「相対的貧困率」と呼ばれる指標では、日本は、OECD加盟先進国の中で3番目に不平等な国である。日本より不平等な国は、アメリカと、パレスチナ難民が多く住むイスラエルのみである。
日本のこの高い貧困率の原因は、市場所得(社会保障給付を加えたり、税や社会保険料を差し引いたりする前の所得)の不平等にあるのではない。原因は、低所得者が直面している税負担や社会保障負担の高さと、給付の低さにある。
本稿では、そのことを示した上で、課税最低限未満の収入の人を含めた低所得者全体の手取りを集中的に引き上げる政策の本命は、「所得補給(給付付き税額控除)制度の導入」と、基礎年金などの「社会保険の税方式化」とであることを明らかにする。
一方、手取り額の引き上げのために様々な「控除の引き上げ案」が、提案されてきた。しかしこれらの案は、課税最低限未満の収入の人の手取りを全く増やさず、中高所得者の所得税を大きく減税してしまう。とくに、「控除の引き上げ案」は、低所得者の手取り引き上げの目的のためには、効率が悪い。その原因は、日本の貧困率の高さが、低所得者が直面している社会保険料が極めて高いことを無視していることにある。
本稿の第一部では、低所得者に対する再分配政策としての社会保障改革を論じる。次に第二部では、非正規雇用・主婦など、個人として低所得の人々に働くインセンティブを与えると言われる各種の所得税制改革案を評価し、低所得者の可処分所得を引き上げるためにより有効な改革を提案する。

2025/06/09

AGIワーキングペーパー・シリーズ「大都市の集積の利益へのリモートワークの影響」

アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「大都市の集積の利益へのリモートワークの影響」を発行しました。(2025年3月発行、唐渡広志氏と共著。

全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2025/WP2025-05.html
【AGIリポジトリhttps://agi.repo.nii.ac.jp/records/2000209

要約:
本論文は、コロナ禍前後のデータを用いて、リモートワークの普及が日本の主要都市における集積の利益と生産性に与えた影響を分析する。対象は札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の6都市である。
リモートワークにより物理的近接の重要性が低下し、巨大都市から地方都市、都市中心部から周辺部への労働力移動が生じた。本稿では、集積の利益がオフィス賃料に反映されることを利用し、ヘドニック法を用いて企業の空間需要と生産性の関係を分析した。
その結果、仙台を除く全都市で生産性の上昇が確認され、特に札幌と福岡での伸びが顕著であった。さらに、コロナ後の期間においては、局地的な集積の生産性への効果が有意に高まっていたことも示された。

2025/06/04

AGIワーキングペーパー・シリーズ「コロナ禍が通勤鉄道沿線に与えた住宅家賃への影響」

アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「コロナ禍が通勤鉄道沿線に与えた住宅家賃への影響」を発行しました。(2025年3月発行、山鹿久木氏と共著。

全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2025/WP2025-04.html
【AGIリポジトリhttps://agi.repo.nii.ac.jp/records/2000211

要約:
本稿は、コロナ禍後に普及したリモートワークが都市圏通勤鉄道沿線の住宅家賃に与える影響を、 理論・実証両面から分析する。 リモートワークの普及は、①出勤率の低下と、②通勤混雑の緩和という二つの経路を通じて、都心 から離れた地域の家賃を相対的に押し上げた。 しかし、通勤の非金銭的コストの影響を分析するために従来用いられてきた山鹿・八田(2000)の 家賃モデルは、出勤率変数を含んでいない。本稿ではこの変数を導入して、リモートワークによる家 賃変化を定式化する。 実証分析においては、コロナ禍前後の家賃データを用いて、混雑率のみを変数とする従来モデルか ら導かれる理論家賃と比較することで、出勤率の低下が家賃変動に与える追加的な効果を検証する。

2025/03/27

AGIワーキングペーパー・シリーズ「財政補助なしの『年収 130 万円の壁』対策」

アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「財政補助なしの『年収 130 万円の壁』対策」を発行しました。(2025年3月)

全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2025/WP2025-03.html
【AGIリポジトリhttps://agi.repo.nii.ac.jp/records/2000185

要約:
給与所得者の妻の年収が 130 万円を超えると社会保険料を妻自身で納めなければならなくなるために、世帯の手取額が急減することは、「130 万円の壁」と呼 ばれている。本稿は、政府による財政支援なしにこの壁を取り除くことが可能であることを示す。具体的には、給与所得者の妻の年収が 130 万円を超えた場合、 夫の雇用先に「卒扶養手当」の支給を義務付けることによって、雇用先の利益も、この世帯の手取りも、共に増加させ続けられることを示す。さらに、そのた めに必要な、日本年金機構と夫の雇用先との間の財務調整を明らかにし、それを可能にするために政府が整備すべき制度および税制を提案する。

2025/03/21

AGIワーキングペーパー・シリーズ「Causes of the Sharp Decline in Migration to Major Metropolitan Areas in the 1970s」

アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「Causes of the Sharp Decline in Migration to Major Metropolitan Areas in the 1970s」を発行しました。(2024年11月(2024年12月に編集))

全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2024/WP2024-18.html
【AGIリポジトリhttps://agi.repo.nii.ac.jp/records/2000145


Causes of the Sharp Decline in Migration to Major Metropolitan Areas in the 1970s

要約:
Japan's rapid growth in the 1960s was accompanied by a massive migration from rural to urban areas. However, immediately after 1970, migration declined sharply, and at the same time, the rate of economic growth plummeted.

To explain this decline in urban-bound migration, we estimated the urban-bound migration function.

The estimation reveals that in the 1970s, the largest factor contributing to the decline in this migration was the relative increase in per capita income in rural areas. The second most important factor was narrowing regional disparities in the job-to-application ratio. In addition, the relative increase in the stock of social capital in the local regions also contributed. However, the population change in the rural areas had negligible effects on urban-bound migration in the 1970s.

This paper also demonstrates that the relative increase in per capita income in rural areas is largely due to policy-based regional redistribution, implying that the large-scale redistribution of the fruits of rapid economic growth to rural areas halted urban-bound migration and reduced the growth rate. This suggests that for developing countries experiencing high growth, curbing the political pressure to redistribute to rural areas may be important to sustain the growth.

2025/03/10

AGIワーキングペーパー・シリーズ「解雇手当契約を可能にする社会インフラ整備」

アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「解雇手当契約を可能にする社会インフラ整備」を発行しました。(2024年3月)

全文は下記からご覧ください:

「解雇手当契約を可能にする社会インフラ整備

要約:

米国では人材の解雇と新規採用によって、技術革新に必要な、機敏な人材の配置換えが可能である。対して、日本では、解雇が困難であり、その分、特に、IT 産業などで、時代に合った採用が出来ず、長期的な生産性の伸びを抑制している。

本稿では、まず、従来からの慣行型の雇用契約を残しつつ、解雇条件を明文化した新規契約をも可能にする規制緩和を提案する。次に、そのために必要な解雇手当基金や雇用保険制度などの社会インフラの整備を提案する。特に、企業による解雇手当基金への積み立ての義務化、国によるデフォルトの解雇手当水準の設定、雇用保険料への履歴料率制の導入など、労働市場の健全な流動化を促進する仕組みについて論じる。解雇が起きにくいことを前提として構築されている現行の社会インフラのまま、解雇条件を明文化した契約を導入すると、企業による解雇の頻発や労働者による解雇手当獲得を目的とする退職などのモラルハザードを生むことになるからである。

本稿で提案する社会インフラ整備の下では、解雇条件を明文化した新規契約を結ぶ企業に対しては、解雇時にそれが社会に及ぼす負担に応じたペナルティを与える一方、解雇される労働者には解雇手当の給付を確実にする。解雇された労働者が受ける保護は格段に向上する。

一方、企業はそれらの代償を払った上で、自社に必要な能力を持たない労働者を解雇できるため、能力のある労働者のみを高い賃金を支払って雇用できるようになる。これは、新時代が必要とするイノベーションを、日本でも可能にする。

2025/02/27

AGIワーキングペーパー・シリーズ「内外無差別化の必要性」

アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「内外無差別化の必要性」を発行しました。(2023年1月)

全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2023/WP2023-01.html
【AGIリポジトリhttps://agi.repo.nii.ac.jp/records/2000035


「内外無差別化の必要性

要約:
 現在、旧一般電気事業者(旧一電)の発電部門は、社内小売部門とのみ、変動数量 契約の一種を結んでいる。この契約には、契約で購入した電力の、取引所への再販禁 止などの条件が付けられている。この契約を「UR契約」とよぶ。
 本稿は、UR 契約が社内でのみ結ばれていることが、次の弊害を生んできたことを指 摘する。第 1 に、複数価格の併存が、社会的に非効率的な資源配分をもたらす。第 2 に、市場価格高騰時に価格高騰を増幅させる。第 3 に、発電部門による取引所への販 売量の変動が、先物市場の発達を阻害する。
 日本の UR 契約には、高い水準の取引上限値が設定されている。そのため、気温の 上昇のように旧一電小売部門の電力需要を増大させる要因が生じた際にも、小売部門 の需要量が UR 契約の上限量を超えない需要量に留まり、小売部門は新電力に比べて 安い契約価格で購入し続けることができる。これが上記の弊害の原因である。
 発電部門が UR 契約を結ぶためには、小売側に対して、契約に基づいて購入した電 力の取引所への再販売禁止などの契約条件を、遵守させる必要がある。ただし、発電 部門にとって、新電力に対して、これらの義務付けの遵守を監視するためには、社内 取引で行う場合と比べて大きな監視コストが追加的に掛かる。このため、発電部門は、 新電力とは UR契約を結んでこなかった。
 一方、契約における内外無差別、すなわち「すべての小売事業者が、旧一電の小売 部門と同一の契約条件の契約を、旧一電の発電部門と結べること」が義務付けられた 場合、旧一電の発電部門にも、新電力に対する監視コストに見合った禁止的に高い料 金を取らざるを得なくなる。この結果、日本で現在行われている UR 契約は、諸外国 と同様に存在しなくなり、UR契約が生む上記弊害を取り除去される。

2025/02/17

AGIワーキングペーパー・シリーズ「大都市への人口移動の決定要因としての地方人口と地域間所得格差」

アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「大都市への人口移動の決定要因としての地方人口と地域間所得格差」を発行しました。(2022年3月)

全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2022/WP2022-07.html
【AGIリポジトリhttps://agi.repo.nii.ac.jp/records/220


大都市への人口移動の決定要因としての地方人口と地域間所得格差

要約:1960年代の日本の高度成長は、地方圏から大都市圏への大規模な人口移動を伴っていた。ところが1970年前後に急速に人口移動が減少すると共に、経済成長率も激減した。

当時の地方圏から大都市圏への人口移動のうち、中学校・高校の新卒者の占める割合は3分の1未満であり、20代、30代の移動も多かった。このため、人口移動関数の推定を15歳以上の各年齢層別に行った。結果的に、39歳以下の年齢層人口で、最も高い決定係数が得られた。なお、この年齢層の地方圏人口は、70年代を通じてほぼ一定であるので。地方圏人口の減少が人口移動減少の原因ではない。

1970年代において、この年齢層に人口移動減少をもたらした最大の要因は、有効求人倍率の地域間格差が縮小したことであった。二番目に大きな要因は、地方圏の一人当たり所得の相対的な向上である。さらに、地方圏の社会資本ストックの相対的な増加も貢献している。

次に、中学校・高校の新卒者に限定してこの回帰分析を行うと、短期的要因である有効求人倍率の格差縮小は、有意ではなかった。新卒者にとっては、地方圏の一人当たり所得の相対的な改善と、社会資本ストックの相対的改善が、移動のより大きな決定要因となっている。

さらに、本稿では、地方における一人当たり所得の相対的向上は、政策的な再分配によるところが大きいことも実証する。

現在、高度成長を経験している途上国では、その結果として生じるであろう地方への再分配の政治的圧力を、いかに抑制するかが重要であることを、この結論は示唆している。

2023/05/20

「北九州空港へのアクセス改善と北部九州の成長について」のプレゼンテーション

2019年からのコロナ禍を踏まえた、福岡空港への新しい需要予測を元に、北九州空港へのアクセス改善投資の採算性予測を改訂しました。

改訂後の予測が載ったスライドは、次のリンクからご覧ください。

この新しい予測を用いて、九州北東部議員連盟主催の勉強会においてプレゼンテーションを行いました(2023年5月16日)。