2025/06/17

東洋経済オンライン「若者よ目を覚ませ!」

各党の低所得者対策はいくら何でも見当違いだと思い、6月12日に、東洋経済オンラインに「若者よ目を覚ませ!」と題した記事を書きました


(※ p. 2に関してミスプリを正すなどマイナーな訂正をしたPDFファイル(このファイルでは訂正個所はp. 5)を添付します。

内容は次の通りです。

①低所得者対策としては、各種減税より、給付付き税額控除と基礎年金や健康保険の税方式化の方が効果があるという主張、および、国際的に見て日本は所得税増税の余地が大きいので、所得税増税をすべきだという主張をしています。これらは、従来からの私の主張と同じです。

②一方、可処分所得と市場所得の下での相対的貧困率の国際比較は、メディアでは他であまり見たことがありません。

③以下のように野党を批判しています。

「アメリカのトランプ大統領が金持ち優遇減税の財源獲得のために必要としている関税率の引き上げを、アメリカの製造業労働者は、輸入で痛めつけられた自分たちへの救済措置だと考えて支持してしまった。

同様に、日本の低所得の若者達は、諸政党が提案してきた各種の減税策を、自分達の手取りを増やすための政策だと考えて支持してしまったのではないか。これらの減税策は、政党の支持母体である労働組合員の手取りを大きく増やすが、低所得者の手取りはほとんど増やさない。トランプ支持者を笑う前に、日本の若者は目を覚ますべきである。」

2025/06/12

AGIワーキングペーパー・シリーズ「日本の貧困率と社会保障財源」

アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「日本の貧困率と社会保障財源」を発行しました。(2025年6月発行

全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2025/WP2025-11.html
【AGIリポジトリ
https://agi.repo.nii.ac.jp/records/2000212

要約:

現在日本では、失業率が低下しているにもかかわらず、消費が伸びていない。その一つの理由は、低所得者の可処分所得(すなわち手取り所得)が伸びていないことにある。低所得者の消費性向は高いから、その可処分所得を引き上げる政策は、消費を増やし、経済を活性化させ、結果的に、低所得者以外の可処分所得も引き上げる。貧困率の引き下げは、経済活性化の観点から最重要課題である。
実は日本では、貧困率の引き下げの余地は大きい。可処分所得で計測した「相対的貧困率」と呼ばれる指標では、日本は、OECD加盟先進国の中で3番目に不平等な国である。日本より不平等な国は、アメリカと、パレスチナ難民が多く住むイスラエルのみである。
日本のこの高い貧困率の原因は、市場所得(社会保障給付を加えたり、税や社会保険料を差し引いたりする前の所得)の不平等にあるのではない。原因は、低所得者が直面している税負担や社会保障負担の高さと、給付の低さにある。
本稿では、そのことを示した上で、課税最低限未満の収入の人を含めた低所得者全体の手取りを集中的に引き上げる政策の本命は、「所得補給(給付付き税額控除)制度の導入」と、基礎年金などの「社会保険の税方式化」とであることを明らかにする。
一方、手取り額の引き上げのために様々な「控除の引き上げ案」が、提案されてきた。しかしこれらの案は、課税最低限未満の収入の人の手取りを全く増やさず、中高所得者の所得税を大きく減税してしまう。とくに、「控除の引き上げ案」は、低所得者の手取り引き上げの目的のためには、効率が悪い。その原因は、日本の貧困率の高さが、低所得者が直面している社会保険料が極めて高いことを無視していることにある。
本稿の第一部では、低所得者に対する再分配政策としての社会保障改革を論じる。次に第二部では、非正規雇用・主婦など、個人として低所得の人々に働くインセンティブを与えると言われる各種の所得税制改革案を評価し、低所得者の可処分所得を引き上げるためにより有効な改革を提案する。

2025/06/09

AGIワーキングペーパー・シリーズ「大都市の集積の利益へのリモートワークの影響」

アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「大都市の集積の利益へのリモートワークの影響」を発行しました。(2025年3月発行、唐渡広志氏と共著。

全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2025/WP2025-05.html
【AGIリポジトリhttps://agi.repo.nii.ac.jp/records/2000209

要約:
本論文は、コロナ禍前後のデータを用いて、リモートワークの普及が日本の主要都市における集積の利益と生産性に与えた影響を分析する。対象は札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の6都市である。
リモートワークにより物理的近接の重要性が低下し、巨大都市から地方都市、都市中心部から周辺部への労働力移動が生じた。本稿では、集積の利益がオフィス賃料に反映されることを利用し、ヘドニック法を用いて企業の空間需要と生産性の関係を分析した。
その結果、仙台を除く全都市で生産性の上昇が確認され、特に札幌と福岡での伸びが顕著であった。さらに、コロナ後の期間においては、局地的な集積の生産性への効果が有意に高まっていたことも示された。

2025/06/04

AGIワーキングペーパー・シリーズ「コロナ禍が通勤鉄道沿線に与えた住宅家賃への影響」

アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「コロナ禍が通勤鉄道沿線に与えた住宅家賃への影響」を発行しました。(2025年3月発行、山鹿久木氏と共著。

全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2025/WP2025-04.html
【AGIリポジトリhttps://agi.repo.nii.ac.jp/records/2000211

要約:
本稿は、コロナ禍後に普及したリモートワークが都市圏通勤鉄道沿線の住宅家賃に与える影響を、 理論・実証両面から分析する。 リモートワークの普及は、①出勤率の低下と、②通勤混雑の緩和という二つの経路を通じて、都心 から離れた地域の家賃を相対的に押し上げた。 しかし、通勤の非金銭的コストの影響を分析するために従来用いられてきた山鹿・八田(2000)の 家賃モデルは、出勤率変数を含んでいない。本稿ではこの変数を導入して、リモートワークによる家 賃変化を定式化する。 実証分析においては、コロナ禍前後の家賃データを用いて、混雑率のみを変数とする従来モデルか ら導かれる理論家賃と比較することで、出勤率の低下が家賃変動に与える追加的な効果を検証する。

2025/05/13

米国週刊ニュース誌「TIME」に米の価格高騰対策へのコメントが掲載されました。

米国週刊ニュース誌「TIME」に私の米の価格高騰対策へのコメントが掲載されました。農家に対する適正な補償を伴う輸入関税率の引き下げが必要だとしています。

全文は下記からご覧ください。

2025/03/27

AGIワーキングペーパー・シリーズ「財政補助なしの『年収 130 万円の壁』対策」

アジア成長研究所(AGI)のワーキングペーパー・シリーズとして、「財政補助なしの『年収 130 万円の壁』対策」を発行しました。(2025年3月)

全文は下記からご覧ください
https://www.agi.or.jp/publications/workingpaper/2025/WP2025-03.html
【AGIリポジトリhttps://agi.repo.nii.ac.jp/records/2000185

要約:
給与所得者の妻の年収が 130 万円を超えると社会保険料を妻自身で納めなければならなくなるために、世帯の手取額が急減することは、「130 万円の壁」と呼 ばれている。本稿は、政府による財政支援なしにこの壁を取り除くことが可能であることを示す。具体的には、給与所得者の妻の年収が 130 万円を超えた場合、 夫の雇用先に「卒扶養手当」の支給を義務付けることによって、雇用先の利益も、この世帯の手取りも、共に増加させ続けられることを示す。さらに、そのた めに必要な、日本年金機構と夫の雇用先との間の財務調整を明らかにし、それを可能にするために政府が整備すべき制度および税制を提案する。